uirouのひとりごと

不定期に何か書こうと思います。

Entropia Universeはねずみ講かの巻

先日のゲーム内仮想通貨と現実の通貨のお話のエントリへのお返事をtriconf blogさんからいただきました。こういうWebでの議論(なのか?)はとっても久しぶりなのでどうにも勝手がわかりませんが、まぁ、思ったことを書いてみます。

まず、お話の落としどころを確認するところから考えてみることにします。ですが、triconf blogさんがEntropia Universeねずみ講なのかそうでないのかが議論したいのか、それとも「リアルとバーチャルの等価交換」が如何に問題なのかを議論したいのか、私の読解力不足から理解できなかったので、とりあえずここにあげた二つの事柄に対して考えることにしました。

これについては、定義としてあげられていたWikipediaの無限連鎖講のページを参照してみましたが、僕としてはねずみ講とはちょっと違うんじゃないかなという考えは変わりませんでした。というのは、Wikipediaの最初の所に書いてある定義にある、

無限連鎖講(むげんれんさこう)とは、参加者が金品を払って他の参加者を募集し、参加者が連鎖して無限に増加するという前提で、下位会員から徴収した金品を上位会員で分配する事を目的とした団体の事である。

というのには必ずしも該当しないだろうと思ったということです。というのは、確かにEntropia Universeではある人がPEDを手に入れるためには他人のPEDを必要としますが、この場合の他人は上位会員や下位会員といった区別でもって組織された下位会員ではなく、おそらく同じ権限を持ったただの他人なのではないかと思うからです。
このただの他人という関係は、ねずみ講というよりは、株式や先物取引などの投機に似ていると思います。経済はちっとも明るくないので間違えている可能性があり恐縮ですが、たとえば株式を例にとると、配当や会社の時価総額などによって一株あたりの価値が本来なら決まるはずです。しかし実際にはこのようにはならないようです。これは、会社の運営の良し悪しなどによってその株の価値は上下することが予想できます。このときに、この会社はこの先とっても良い業績を上げるだろうからきっと配当もよくなるし、時価総額も上がるだろうと思った投資家などがその会社の株を買おうとします。このとき、その株券の価格は現在の時価総額などとは関係なく、売り手と買い手の間での納得がいく金額で取引がされます。この、売り手と買い手の間での納得のいく金額は、時には時価総額やら配当やらといったものから算出される金額よりもずっと大きくなったり、時には小さくなったりもするようです。このようなときに、実際にその会社に対して投資をするといった気持ちで株式を買うわけではなく、単にその株券の金額の上下だけを考えるだけの投機行為も行われるようです。すなわち、投機においてはその株券自体の意味は単に将来いくらで取引されるであろうという予測情報だけでしかなく、その会社がどんな仕事をしていようが、どんな商品を出していようが、そんなことは関係なく、単に予測でよいといわれたら高くなるだろうといっただけのものしか見ないこともあるということです。このとき、これらの株券や先物を買う人たちは所持している金額の差はあれども、皆平等に買いもするし、売りもする人々なのだと思います。この観点からいくと、Entropia UniverseのPEDを支払って何かを買うという行為は、そのもの自体には本来は価値がないのかもしれないけれど、実際にそれに対して価値を見出す人が居るであろうという予測にしたがって投機または投資を行っていると考えたほうが、より自然ではないかと思います。

また、上記の観点に立っている私としては、triconf blogさんは仰っているこの下り

もともと価値のないものに対してお金を払うのは、運営会社MindArkでしょうか、それともユーザでしょうか?
当然ユーザですよね。
であれば、MindArkが果たしている役割というのは、「価値のないものを価値があるがごとく見せかけている」ということにならないでしょうか?
まさに、ねずみ講たる要件を見事に満たすことになります。

では、どうして「まさに、ねずみ講たる要件を見事に満たすことになります。」になるのかがよくわかりません。価値のないものに価値を見出すことの何処がねずみ講たる用件を満たしているのでしょうか。

  • 「リアルとバーチャルの等価交換」が如何に問題なのか

次に、リアルとバーチャルを等価交換することがどう問題なのかの話を考えたいと思います。
この問題は、triconf blogさんの

繰り返しますが、PEDが異質な最大の原因は、1USドル=10PEDという現金との等価交換を保障しているという点です。
PEDは現金そのものなのです。
つまり、現金の価値がゲームの中の出来事によって簡単に変動してしまうという、非常に危険な要素を内包したシステムなのです。

Entropia Universeの中の世界は、MindArkの思いのままです。たとえば、今まで1個しかなかった宇宙リゾートを突然もう一個作ることも可能でしょう。そうしたら、単純に考えれば宇宙リゾートの価値はいきなり半分になってしまい、1000万円を出して最初の宇宙リゾートを買ったユーザは大損することになります。
(実際には「宇宙リゾートの潜在市場」(んなもんがあればですが)の掘り起こしによって、単純に半分にならないことも考えられますが)

という下りの部分が議論の一つの問題なのだと思います。私は、この意見に関してはかなり賛成です。ただこの問題は、Entropia Universeの世界がMindArkの思いのままであるという点が問題の本質なのであって、リアルとバーチャルの等価交換をすることが問題の本質ではないような気がします。確かに、MindArkは上記のようなことも起こせるでしょうし、MindArkが意図せずに何かのポカをやらかして、ゲーム内での何かの価値が乱高下することも十分にありうると思います。そういったことが起こった場合の問題は想像に難しくありません。しかし、それはMindArkが信用できないという点のみが問題なのであって、もしMindArkが信用できる機関なのであったら問題がなくなるのではないかという予感がします。MindArkを信頼できるもの、たとえば政府機関と読み替えるとどうでしょうか。もし真に信頼できる政府機関がEntropia Universeを管理運営してくれるのであれば、そのEntropia Universeの世界では上記のような問題は発生しないとも考えられます。したがって、上記の問題の本質はおそらくMindArkが信頼に足らない普通の会社だというところから来ている問題なのだと思います。また、MindArkが政府機関であると考える連想ゲームから、Entropia Universeはひとつの国として考えてもいいのではないかと思います。この場合、Entropia Universeと米ドルとの交換は為替取引と同じような感覚で受け取ることができないでしょうか。この考え方からいくと、MindArk国はとても情勢不安定な国で、いつ何処で無差別爆弾テロなどの理不尽な事件や事故がおきるかもわからず、いつ国自体が破綻するとも限らない、そういう国なんだと考えられます。このとき、そんな国の宇宙ステーションに大金をつぎ込む人というのは確かに変人なんだと思いますが、そうする人が居てもいいと私は思います。

また、引用は前後してしまうのですが、

というのは、マイレージやヨドバシポイントは「現金そのもの」ではなく、景品表示法などに則って運用されている「景品」だからです。
こういったサービスポイントは原則不可逆です(現金化はできない)ので、たとえば100ポイント=100ギルの等価交換だとしても、ゲーム内で大インフレが起こったところでさほど問題にはならないのではと思います。
(もともと「おまけ」なので、おまけの価値が暴落してもあきらめはつく)
さらに、逆方向に、ゲーム内通貨をポイントへ返還するということは各サービス会社は絶対やりたがらないと思いますので、この点もポイント→ギルの交換を安全にすることに寄与するでしょう。

といったあたりでは、仮想通貨同士の交換では、ゲーム内で大インフレが起こってもさほど問題にならないと仰っていますが、私は、この問題は前述のMindArkが信用ならないことにより起こる問題となんら問題の本質は変わらないと思います。したがって、この例でのFFXIのギルとヨドバシポイント間ではこの問題はさして問題にならないとされているのに、なぜ現金化できるPEDだと問題になるのかがよくわかりません。(もともと「おまけ」だとしても価値が暴落したら嫌に思うのは変わりませんよね?)

あと、蛇足になりますが、triconf blogさんの最後のオチのところで、

ということは、PEDとキメラのしっぽを取引するということは……

そりゃ〜、ただのRMTだってことですwww

と書かれています。この下りだとRMTがさも悪いもののようにあげられていますが、RMTのどこがいけないんでしょう。私はRMTはあってしかるべきだと思っています。また、Entropia Universeにおいて物とPEDの交換がRMTと等価値なのには何の問題もない、もっと強く言えば、RMTでしかゲーム内のものを買えないなんて、なんてRMTとシームレスにゲーム世界がつながっている。なんてすばらしいゲームのルールなんだろう、と考えます。このあたりの基本的な考えは当blogの「株式会社GM-Exchange」代表、宇田川氏インタビュー@MMO総合研究所の最初の段落に書いてありますので参照してみてください。